傑作ダイアグラム発掘紀行:世界大百科年鑑1973

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Amazonマーケットプレイスで購入した、「世界大百科年鑑1973」(平凡社)が届いた。¥2600也。さすがに年期の入った外観で、今となっては過去の遺物でしかない35年前の年鑑である。やっと手に入った。

さて、なんでこんな本を探し求めていたかというと、本来とは別の意味での価値が埋もれているからだったりする。言い方を変えれば、デザインのことを教えてくれるような情報が載っている本ではないが、デザインによって情報を伝えてくれる本である。

実は、この年鑑には、僕にとってのデザインの神様の一人、杉浦康平が手がけた各種図版が多く挿入されているのだ。

diagram2.jpg有名な「時間軸日本列島」。今でも数多く引用されているが、この本が出典の一つ。

交通の発達は時間軸地図に収縮運動を起こし、都市の関係をこれまでの線的・面的な結合から、点的・断続的な関係に変えた。ABC図はそれぞれ東京、大阪、能登半島最北端の蛸島駅を基点に日本各地への最短到達時間(待ち時間なし)を求め、変形地図化したもの。空路や新幹線が通る大都市はするどく針状に基点へ引き寄せられる一方、交通不便な下北、能登、房総、紀伊半島は外に突出し列島の海岸線は時間の干渉で奇妙な輪郭に変形する。鉄道の線が陸地をはみ出して走っているのは、中部山地の支線の駅が時間的に海岸より遠いため。山陽、山陰、東北、九州の本線などは空港所在地を経由するので複雑な深いしわが刻まれる。外房は、東京に近くて以外に遠い。(本文より)


diagram3.jpg中東の石油利権地図(左)。イギリス資本が絡んでいるのが、水色部、赤紫部、黄色部とやたらと広範囲。東南アジアの石油利権地図(右上)。赤部(アメリカ資本)が以上に広い。右下は石油会社の資本関係。35年経った今ではこの関係も変わっていると思われる。


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東京駅の地下駅の構造図。通常の地図では見えない、地下に伸びていく街をいち早く図解。

いずれも見えにくいものを可視化する着眼点が非常に素晴らしいことはいうまでもないが、あわせて感嘆するのが、これらはすべて手作業で作られているという事実・・・。(illustratorどころかパソコンすらない時代)


 
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デザインのページもなかなか面白いので、記事が読めるようにマクロで撮影。こうしてみると1970年代の問題意識が今指摘されていることとそんな変わってないことが面白い。人間はずっとそうやって問題意識を抱えながら生きていくものなのかも知れない。


昔の平凡社の百科年鑑シリーズは隠れたダイアグラムの宝庫なので違う年のものも集めてみようと思う。

ところで地図というものは世界全般についてその目に見える姿を表すものなのですが、僕の場合は目に見える世界ではない。その内部にあったり、全体の奥にもうひとつ透視して見えてくるような目に見えない事象の地図化に次第に興味を持ち始めていくのですね。
もうすこし説明すると、地図というのは一般的に俯瞰した状態で描かれる。例えば大地の広がりその上の人間の振る舞いといったものを天に目を投げ上げて見下ろすという上からの視点で描かれるわけですが、僕が興味を持つのは地上で暮らす人々の振る舞いが主題になっている。一人一人の振る舞いを軸にすると世界がどのように変容していくか、個人個人の行動ないしは主観が逆に世界をどう捉え返していくか、そういう地図をつくりたいという願いが終始一貫した観念になっている。
<中略>
目に見える事象だけではなく五感を刺激して生起する出来事を感覚知覚の軸をずらして捕らえることで明らかにしたい・・・。そのことで世界をもう一度リフレッシュできる。感覚の軸をずらすことを積み重ねると、初めて全体的な存在に触れることができるのではないかという、ひとつの実験なんですね。
(杉浦康平インタビュー デザインの現場1996 vol.13 No.82)


最近、こういう埋もれた本を探して取り寄せるような記事が多い気もするが、実は古本漁りはキャリア長く、昔、学生時代に師匠から「(60年代のグラ フィックデザイナー達は)神田神保町の古書屋の店先で海外の雑誌をめくって分析するのが勉強だった」と聞いた頃からだから、かれこれ十年以上はずっと暇見て実践している。解説もないところから、自分の眼で抽出していくのは楽しい。

今の本屋さん行っても、新しくて今売れている本しか並んでおらず、過去の重要な本は見つからないので物足りないのだよな。歴史の積み重ねは、未来を考えていくための重要なリソースであり、新しい考え方だって大抵は何かから再生産されたり再構成された結果であることは心に留めておきたい。



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このページは、kamihiraがMay 21, 2008 10:00 AMに書いたブログ記事です。

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