スプーン・コレクター

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最近、ふと思い立ってスプーンを集めている。経費を節約してカトラリーセットじゃなくてテーブルスプーンのみ。そしてコレクションというほど大仰なものではなく、普通に毎日使っている。こうやってならべて見てるだけでは、へぇ色んな形有るんだねぇ、ぐらいしか思わないかもしれないが、実際に使ってみると、「たかがスプーン」とあなどっていたものが、びっくりするぐらいそれぞれの使い心地や舌触りが違うのが分かって、それが面白くてたまらない。食事も楽しくなるってもんだ。

例えばグラタンを食べるときのスプーンを使うプロトコルを簡単に分解すると、柄をつまむ/指で回転させて持ち替える/皿のなかのグラタンにつき刺す/まぜる/寄せ集める/適量に切り分ける/適量をすくう/すくったものを口まではこぶ/口の前で息を吹きかけてさます/口を開けて差し込む/唇や歯でおさえながらひきぬく/噛んでいある間にもったまま待機する・・・などの行為を見つけることが出来る。スプーンというシンプルな道具と料理と人間(の手や口)との間には複雑かつ絶妙な相互関係があるが、通常はこういったことは意識されることはない。けれどもよく観察してみると、思想のあるスプーンは、本当に些細なところまで深く考えて作られている。
パソコンばっかりつかっていると、感覚が鈍っていくのを自分で痛感するので、もうすこし日々の生活のなかで感覚を鋭くしていかなきゃね、ってなわけで「違いが分かる男」を目指して感覚を分化していトレーニングである。

以下、手持ちのものをいくつか紹介。


geo.jpgアレッシーのCACCIA。もともと1938年に作られたクラシックなデザインの復刻版らしい。適度な重みと光沢があって、ちょっと持っただけで上品さが伝わってくる。持つ柄のアームと受ける部分が中指の上でやじろべーのように絶妙にバランスをとる。日本人には受け口がちょっと大きいかも。

tubame.jpgメッキで有名な街、燕市の燕振興工業社製。作者不詳。どこかのインテリアショップでみかけて、曲線のグラマラスな美しさに即買した。柄の端がかなり幅広になっていて、持つときに均等に重心がかかる。受け部分に浅く厚みがあるので舌触りもよい。

jsmo2.jpgジャスパーモリソンによるデザイン。ミニマム道を究めるようなシャープな形態だ。受け口の部分が細面で直線的なので、皿をまさぐるときにフィットして、非常にすくいやすい。そして口からするっと抜ける。(思わず「おお」と声がでた) さすがに考え抜かれているな。あまり量が乗らないのは、ひょっとしてゆっくり食えという意味か。

yanagi.jpg柳宗理によるデザイン。これは上のと対極にあるような、ポテッとした愛嬌あるかたち。受け口が深いので口に運んだときの感覚にはちょっとクセがある。使うまで気がつかなかったが、持ち上げるときになんだか力が入りやすい。親指で押さえる柄の端の跳ね上がりの微妙なカーブがそうさせていることに気付いたとき、感動した。

sunao.jpggrafによるデザイン。SUNAOシリーズのスプーン。名の通り外観はそんな目立たないが、柄の裏側の角が全部とられて丸くなっている。持って始めて中指の感じで気がつく。なんて小さな工夫・・・。やや深い受け口の角度とくびれのバランスとによって手へのフィット感は極めて高い。


muji.jpg無印良品のスプーン。作者不詳。厚みのある受け口としっとりしたつや消しの仕上げで、ほどよい舌触り。無印良品らしく控えめな主張だが、これはすごい完成度だと思う。実はこの無印のスプーンで何気なくカレーを食べているとき、その使い心地に「ドキッ」とした経験が今回スプーンをあつめ始めたきっかけだったりする。

ar.jpg有名な変わり種。アレッシーのハート型スプーン。アイスクリーム用によさそうだな、と思ったら、もともとハーゲンダッツのキャンペーンでデザインされたものらしい。奇妙なかたちながら不思議と食べ心地も全然気にならない。


今回は紹介するのは以上だが、スプーンのデザインも奥が深いものだ。たった「食べ物をすくう」という単機能なはずなのにここまで使いごこちを考えられて作られているとは。あとは、大御所のカスティリオーニやソットサスのスプーンを試してみたいのだが、残念ながらまだ経験したことがない。

実際、ヨーグルトなどを食べ比べてみると、スプーンによって味まで変わるように感じるのはおそらく気のせいじゃないと思う。味は複合的な要素で作られているひとつの経験だ。

人間は多分、必要に応じていろんな違いを感じ分けられて生きてるんだろうけど、現代の生活は刺激が強くなる一方で、こういった繊細な感覚を意識する機会がほどんどないというのは、もうちょっとちゃんと考えなければならないのかもしれない。情報を感じとるセンサーの精度と経験の記憶は表裏一体なはずなのだから。






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COMMENT(4)

いいですね~

私も無印のスプーンあたりから始めようかな。

カミさんがすぐなくすので自分で洗って別に保管する必要がありますが。

kamihira :

無印のはマジでおすすめですよ。たしか500円ぐらいです。

なくすって・・・いったい何処に消えるのか気になります(笑)

hana :

使いやすいスプーンをずっと探していて。
15年位前偶然めぐり合った機内食のもの(ごめんなさい)、中学生になった息子と二人でこの一本を使っています…

おさじの大きさや形や深さ、持ち手の重さのバランスや厚みやカーブ、そういうのなんです。

智留彦スプーン放浪記
というブログ、素敵ですよ。ああ私、間違っていなかったんだって思いました。

ももたろう :

 特別養護老人ホームの管理栄養士です。
 入居者さんにとって食べやすいスプーンを探しています!
 介助する人がいるので、介護用の特別なものでなく、
 普通のスプーンで大丈夫です。
 縦4センチ、横2.5センチ、深さ0.6~0.7位のスプーンが
 あればぜひ教えてください。よろしくお願いいたします。

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このページは、kamihiraがJuly 4, 2008 12:38 PMに書いたブログ記事です。

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