DISGUISED -a true story-

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 中古で買ったまま長らく放置していた「Disguised -a true story-」 by Pat Moore(1985)を読んだ。最初原書を買ったものの、直後に邦訳も出ていることを知ったので、時間短縮のためにそっちで済ませることにする。読みやすい文章だったので、仕事合間の2時間程度で読了。

 この本は、1980年頃、当時26歳のある若い女性プロダクトデザイナーが85歳の老人に変装し、アメリカの街の中をフィールドワークしたというドキュメントで、参与観察の手法による「ニーズ探索」の先駆的とり組みとして知られる。現在インクルーシブ・デザインのワークショップで広まっている、インスタントシニア体験の源流とも言える。

 一般書なので、その活動の中での人々とのふれあいなどのエピソードが多く、あまり研究内容に突っ込んだ記述はされてないのがちょっと残念ながら、デザインがめざすべき答えへ、体張って果敢に取り組む真摯な姿勢には心を打たれた。
変装、と一言でいっても、ちょっと服や髪を変えて誤魔化すのではなく、眼の光を濁らすために眼球にベビーオイルを垂らし、歯を汚すために油性クレヨンで塗り、強烈な肌荒れと戦いながらもラテックスで特殊メイクをしたり、など全身くまなく加齢させる徹底ぶり。誰から見ても老人になりきり、ムーアは街へと出て行く。そして3年間にわたり、全米で100以上の街で老人目線で彼らの行動や人々の対応の様子を調査したという。

社会学的な問題へと視点を広げつつ、共同体に生きる人間どうしの関わり合いのかたちを突き止めようと入り込んでいく過程には、強く引き込まれた。今でこそアプローチとしてねらい所が分かるけど、当時は理解してくれる人も少なかっただろうに。その先駆的なデザインに対する考え方に、脱帽。


トレパニアンという小説家は、最近次のように書いている。
「偏見がもたらす最も残酷な効果は、偏見の眼で見られている人たちまでが、口に出してこそ言わないが、心の奥深くで、その偏見は実は正しいのではないかと思いこんでしまうことにある」
こういう見方は老人についての偏見にもっともよく当てはまる。老人達自身が自分が老人になる前に65年ないし70年も、年寄りに対してこういう偏見を持ち続けてきたのだから。
黒人は黒人でない人の感覚が一生分からないし、背の低い人も背が高くなってみない限り、背の高い人の気持ちが一生わからない。しかし老人達は長い間老人ではない人として暮らしてきた後、ついに自分も老人になってしまったことに気付く。若い時には老人に対する否定的な見解を何も考えずに受け入れ、自ら進んで賛同したこともあったので、今更その道理に抵抗できる道理はない。やがて自分たちがその偏見の的になったときに、その偏見を正しいと思ってしまうのだ。(P217)
もし年老いた男性や女性を、友人や同僚だと思うことが出来なければ、どんなに訓練をつんでも両者の間はうまくやっていくようにはならないだろう。
老人のためのよりよい商品やサービスを生み出すことを私が楽しんでいるほどには、老人達はそれを期待していない。彼らの基本的なニーズは、注意深くデザインされた環境などではなく、むしろ一般の人からもっと思いやりに満ちた態度であるということがわかる。お年寄りにとってより適切な家、よりよい個室、より便利なアパートや住宅、そしてもっと美的でより快適な老人ホームと健康関連設備を作ることにかけて、デザイナーはもっとずっと良い仕事をすることができるであろう。しかし、老人を価値ある人とみなし尊敬できる人がそこにいなければ、人生は彼らにとってわびしいままであろう。(P244)
何が見えるの、看護婦さん、あなたには何が見えるの
あなたが私を見る時、こう思っているのでしょう
気むずかしいおばあさん、利口じゃないし、日常生活もおぼつかなく
目をうつろにさまよわせて
食べ物はぽろぽろこぼし、返事もしない
<中略>
だから目を開けてよ、看護婦さん----目を開けてみてください
気むずかしいおばあさんではなくて、「私」をもっとよくみて!
(ある老婦の遺品の詩より P245)全文がこちらのサイトで紹介されてます


読み終わって、インクルーシブデザインのことがはこれまであまり深く知ろうとしてこなかったけど、かなり関心が湧いてきた。エスノグラフィーやニーズ探索もやっぱり面白い。
偶然にも、こんどの第二回情報デザインフォーラムではそういう講演が企画されていて楽しみ。

参考リンク:
インクルーシブデザインワークショップに行ってきたよ! ---TRANS [hatena]
・ユニバーサルデザインとインクルーシブデザインの違い その2 ---イソムラ式



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このページは、kamihiraがSeptember 9, 2008 5:43 PMに書いたブログ記事です。

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