インフォグラフィックス・ワークショップ1 in Shibuyaへの参加後雑感
9月27日にTubeGraphicsの木村さんが主催された「インフォグラフィックス・ワークショップ1 in渋谷」のお手伝いとして参加してきた。最近はずっと体調が悪くてなかなかブログ書く力も湧かないが、熱心に学ぶ参加者のみなさんから元気を頂いた気がする。
テーマは「人が集まる 魅力を伝える」と設定され、渋谷に点在する集客力の高い建物空間として、東急ハンズ、LOFT、東急フードショー、109、Q-Front、の5つの題材から一日だけでインフォグラフィックスを制作する、というワークショップである。
テーマは「人が集まる 魅力を伝える」と設定され、渋谷に点在する集客力の高い建物空間として、東急ハンズ、LOFT、東急フードショー、109、Q-Front、の5つの題材から一日だけでインフォグラフィックスを制作する、というワークショップである。
社会人3人+学生1人で構成された5チームが、自分たちのテーマに沿って街で必要な情報を観察・リサーチ・収集・分析・整理し、どのようにデザインすれば他の人に注目・理解されるかをチーム一丸となって考え、インフォグラフィックスを完成させます。ワークショップ参加者全員の情報リテラシー(情報を使いこなす能力)を高めていくことが目的です。さて、ちょっと出遅れたので当日の具体的な内容については参加者やオブザーバーの皆様からたくさんレポートがあがってますので、(浅野先生のレポートが詳しいです)そちらを参照頂くとして、僕は思ったことを交えながら書いてみる。
ワークショップ概要より引用
今回のワークショップのキーワードだった「魅力」は、通常は論理で示すよりも感性に訴えかけるような手法で表現するものだ。例えば広告媒体の表現者は常にそういった人の想像や欲望を喚起させるためにはどうすればいいかを考えている。今回のワークショップでは、プロ向けということで、あえてその捉えにくいものをインフォグラフィックスの手法で表現することに挑戦する、というところにワークショップのポイントがあった、と思う。
インフォグラフィックスは、たいていの場合、情報がきっちりとしたルールの上で視覚的に記述されていることが特徴で、機能的に伝達することを目的としたグラフ・マップなどの定量的な情報や、物事の仕組みなどの構造情報にはめっぽう力を発揮するが、ノンバーバルな情報や印象としての情報(形容表現等)には弱い。というか、たとえば「かわいらしさ」の質をダイアグラムで表現するのはそもそも方法として無理があるように、普通はプライマリとしては扱わない。そういったことを記述するならば、総合的に形成されている魅力の構成要素を分解して、印象のままではなく事実を中心とした情報への変換をかける必要があったわけだ。勝負になるのはそれらがあってこその、切り口(編集方針)であり、示し方(表現)ということになる。
そのため、講師の木村さんからは予め対象を深く調査することが課されており、「オタクになっておいてください」と指示がでていた。オタクとは、今見えている出来事だけではなく、過去の時間軸や周辺関係などの知識も含めて、その場で感じれる印象以上のボキャブラリーを持って対象への愛を語ることができる人間である。なので、当日議論すべき内容は、持ち寄った情報をどこまで明快な切り口に絞れるか、示し方が妥当か、だったと思うが、ちょっと課題の難易度が高かったのか、残念ながらそのプロセスを消化し切れたチームは少なかった。今回のような短期決戦の場合には、その辺を考慮した事前のデータ収集の見極めが非常に大きかったと言える。もちろん全員が時間が少ないということはよく分かっていたと思うが、ある参加者によると「一応いろいろと集めたが、うまくそれを活かせかなった」という声も聞いたので、議論のポイントを摺り合わせ損なったということもあったのかもしれない。
インフォグラフィックスは、言葉不要の「わかりやすさ」をもつ反面で、図の美しさを競う職人的な技巧でもあり、焦点の合わせどころが結構難しい。一枚のグラフィックス作品として面白さをねらえば、情報の編集方法次第で、目から鱗が落ちるような経験を持つグラフィックスになったりするが、(例えば、以前紹介した、所要時間で日本列島を歪めた「時間軸日本地図」は気付かなかったリアリティを我々に突きつける図の傑作だと思う)そういった実験的な試みが一般的な商業誌で有効かとなるとまた話が別で、普通の読者を想定して作るなら、普通に街探索に役立つ情報を優先するというのが通常の感覚だろう。それ以上の凝った表現はヘタをすれば対象不在のスタンドプレーに成りかねない危険がある。デザイナーのように常に空間思考している人種にはあまり想像できないことだが、「図が読めない、わからない」という感想を持つ人は結構多いのだ。今回は媒体としてR25/L25、メトロミニッツあたりのフリーペーパー見開き利用という条件が想定されていたが、若い一般読者を考慮することによって、狙うべき射程はますます狭くならざるを得ない。
そういった葛藤を踏まえた上で、個人的な見解としては、今回のワークショップの場合には、掲載媒体や読者のことはあまり考慮しないほうが制作しやすかったのではないか、と思う。もちろん、このような考え方は人間中心設計には反するが、雑誌の場合は、機器のインタフェースとは違って、繰り返し使うわけでもないので被害を受けることはそれほど多いわけじゃない。記事が読まれるか、読みとばされるかだけだ。ここで普通の読者に向けて消費活動のための情報を重視していけば、既存の情報とそんな変わらなくなり、わざわざ議論してまで手間暇かけたグラフィックスとして表す必要性は薄くなっていく。それはもったいないことだ。だからむしろ、さしあたってはニッチな需要しかなくても、「へぇ、そういう見方があるんだ」と図によってしか気付かせられないことに特化した方が、読み応えのある内容になるのではないか、と僕は考える。講評時に木村さんが109のテナントの変遷や最上階マーケティングの話をされていたが、109に積極的に行くような直接の客層だけではなく、細分化する現代文化の異境の知識を「面白がれる」読者は、若い女性以外にもきっと沢山いる。読者の消費活動には直結しなくても、そういった視点で編集された情報には時代を超えた資料価値が生まれるし、フリーペーパーといえども捨てずに残しておきたい魅力につながるのではないか、と。
終了後の懇親会で、もし難易度を下げるとしたらどういった指導があり得たかのだろうかと、と木村さんにワークショップ設計の意図を聞いてみた。答えは、もちろん事前に自分ならこういうグラフィックスを作るだろうと全てシミュレーションしたが、今回はプロ向けの真剣勝負の場と考えていたため、自分が狙ったイメージで進めさせるということよりも、参加者によってそれを越えるものを見たかった、とのこと。方向転換させたほうがよさそうな場面でもあえてあまり口出しされなかったのは、そういうことだったらしい。しかし、かといって参加者まかせというわけじゃなく、シャッフルディスカッションを改良してディベート風に「賛同」「異見」にして視点を明確にしたりと、参加者相互のエネルギーを有効に使いながらアイデアを洗練させていくための設計には隅々まで気を配っておられたことは非常に興味深かった。あくまでグループの創造性を引き立てるための場づくりに徹するということだったのだろう。この辺にインフォグラフィックスの巨匠としての美学を見た気がする。やはり本質はルール作りなのだ。
打ち上げの開放感の中で、主催者としては心残りだったことも多々あったらしく、今回はワークショップのタイトルに「1」が付いているように、はやくも心は次回での作戦へ向かわれているようだった。僕も見習わねば・・・。
ちなみにコミュニケーションデザイン研究会は、木村さんが会員番号#1で僕が#2番。インフォグラフィックスを偏愛する少数民族の集いである。
以下は、当日のスナップより。
現地取材中のQ-Frontチーム。TSUTAYAとスタバしかみんな知らないけれども、それ以外もいろいろな楽しみがあるビルです。
このチームとはランチをご一緒させていただいた。とくに揉めることもなく結構すぐに方向性が決まっていた模様。
シャッフルディスカッションの様子。メンバーを交換しながら、話す/聞くことでアイデアを具体化していく。
Q-frontチームの初期アイデアスケッチ。最初は見開きで二つを示すという案だったが、シャッフルディスカッションを通してふたつを一体化させたグラフィックスにするという表現方法を得る。(完成作品はメンバーの藤井君のブログで見れます)
終了間際のスパート。このチームはシャッフルディスカッションによってそれまで進めていた自分たちの案の欠点に気がつき、残り時間が1時間を切った中で思い切って捨てて再挑戦した潔さが印象的であった。

インフォグラフィックスは、たいていの場合、情報がきっちりとしたルールの上で視覚的に記述されていることが特徴で、機能的に伝達することを目的としたグラフ・マップなどの定量的な情報や、物事の仕組みなどの構造情報にはめっぽう力を発揮するが、ノンバーバルな情報や印象としての情報(形容表現等)には弱い。というか、たとえば「かわいらしさ」の質をダイアグラムで表現するのはそもそも方法として無理があるように、普通はプライマリとしては扱わない。そういったことを記述するならば、総合的に形成されている魅力の構成要素を分解して、印象のままではなく事実を中心とした情報への変換をかける必要があったわけだ。勝負になるのはそれらがあってこその、切り口(編集方針)であり、示し方(表現)ということになる。
そのため、講師の木村さんからは予め対象を深く調査することが課されており、「オタクになっておいてください」と指示がでていた。オタクとは、今見えている出来事だけではなく、過去の時間軸や周辺関係などの知識も含めて、その場で感じれる印象以上のボキャブラリーを持って対象への愛を語ることができる人間である。なので、当日議論すべき内容は、持ち寄った情報をどこまで明快な切り口に絞れるか、示し方が妥当か、だったと思うが、ちょっと課題の難易度が高かったのか、残念ながらそのプロセスを消化し切れたチームは少なかった。今回のような短期決戦の場合には、その辺を考慮した事前のデータ収集の見極めが非常に大きかったと言える。もちろん全員が時間が少ないということはよく分かっていたと思うが、ある参加者によると「一応いろいろと集めたが、うまくそれを活かせかなった」という声も聞いたので、議論のポイントを摺り合わせ損なったということもあったのかもしれない。
インフォグラフィックスは、言葉不要の「わかりやすさ」をもつ反面で、図の美しさを競う職人的な技巧でもあり、焦点の合わせどころが結構難しい。一枚のグラフィックス作品として面白さをねらえば、情報の編集方法次第で、目から鱗が落ちるような経験を持つグラフィックスになったりするが、(例えば、以前紹介した、所要時間で日本列島を歪めた「時間軸日本地図」は気付かなかったリアリティを我々に突きつける図の傑作だと思う)そういった実験的な試みが一般的な商業誌で有効かとなるとまた話が別で、普通の読者を想定して作るなら、普通に街探索に役立つ情報を優先するというのが通常の感覚だろう。それ以上の凝った表現はヘタをすれば対象不在のスタンドプレーに成りかねない危険がある。デザイナーのように常に空間思考している人種にはあまり想像できないことだが、「図が読めない、わからない」という感想を持つ人は結構多いのだ。今回は媒体としてR25/L25、メトロミニッツあたりのフリーペーパー見開き利用という条件が想定されていたが、若い一般読者を考慮することによって、狙うべき射程はますます狭くならざるを得ない。
そういった葛藤を踏まえた上で、個人的な見解としては、今回のワークショップの場合には、掲載媒体や読者のことはあまり考慮しないほうが制作しやすかったのではないか、と思う。もちろん、このような考え方は人間中心設計には反するが、雑誌の場合は、機器のインタフェースとは違って、繰り返し使うわけでもないので被害を受けることはそれほど多いわけじゃない。記事が読まれるか、読みとばされるかだけだ。ここで普通の読者に向けて消費活動のための情報を重視していけば、既存の情報とそんな変わらなくなり、わざわざ議論してまで手間暇かけたグラフィックスとして表す必要性は薄くなっていく。それはもったいないことだ。だからむしろ、さしあたってはニッチな需要しかなくても、「へぇ、そういう見方があるんだ」と図によってしか気付かせられないことに特化した方が、読み応えのある内容になるのではないか、と僕は考える。講評時に木村さんが109のテナントの変遷や最上階マーケティングの話をされていたが、109に積極的に行くような直接の客層だけではなく、細分化する現代文化の異境の知識を「面白がれる」読者は、若い女性以外にもきっと沢山いる。読者の消費活動には直結しなくても、そういった視点で編集された情報には時代を超えた資料価値が生まれるし、フリーペーパーといえども捨てずに残しておきたい魅力につながるのではないか、と。
終了後の懇親会で、もし難易度を下げるとしたらどういった指導があり得たかのだろうかと、と木村さんにワークショップ設計の意図を聞いてみた。答えは、もちろん事前に自分ならこういうグラフィックスを作るだろうと全てシミュレーションしたが、今回はプロ向けの真剣勝負の場と考えていたため、自分が狙ったイメージで進めさせるということよりも、参加者によってそれを越えるものを見たかった、とのこと。方向転換させたほうがよさそうな場面でもあえてあまり口出しされなかったのは、そういうことだったらしい。しかし、かといって参加者まかせというわけじゃなく、シャッフルディスカッションを改良してディベート風に「賛同」「異見」にして視点を明確にしたりと、参加者相互のエネルギーを有効に使いながらアイデアを洗練させていくための設計には隅々まで気を配っておられたことは非常に興味深かった。あくまでグループの創造性を引き立てるための場づくりに徹するということだったのだろう。この辺にインフォグラフィックスの巨匠としての美学を見た気がする。やはり本質はルール作りなのだ。
打ち上げの開放感の中で、主催者としては心残りだったことも多々あったらしく、今回はワークショップのタイトルに「1」が付いているように、はやくも心は次回での作戦へ向かわれているようだった。僕も見習わねば・・・。
ちなみにコミュニケーションデザイン研究会は、木村さんが会員番号#1で僕が#2番。インフォグラフィックスを偏愛する少数民族の集いである。
以下は、当日のスナップより。
現地取材中のQ-Frontチーム。TSUTAYAとスタバしかみんな知らないけれども、それ以外もいろいろな楽しみがあるビルです。
このチームとはランチをご一緒させていただいた。とくに揉めることもなく結構すぐに方向性が決まっていた模様。
シャッフルディスカッションの様子。メンバーを交換しながら、話す/聞くことでアイデアを具体化していく。
Q-frontチームの初期アイデアスケッチ。最初は見開きで二つを示すという案だったが、シャッフルディスカッションを通してふたつを一体化させたグラフィックスにするという表現方法を得る。(完成作品はメンバーの藤井君のブログで見れます)
終了間際のスパート。このチームはシャッフルディスカッションによってそれまで進めていた自分たちの案の欠点に気がつき、残り時間が1時間を切った中で思い切って捨てて再挑戦した潔さが印象的であった。
木村さんによる総評。僕は雑談していたのでそんな疲れませんでしたが、参加者の皆さんは、大変な集中力で一日を過ごしていたので、本当にあっという間に夜になったことと思う。お疲れ様でした。
カテゴリ
Education , Graphic DesignTRACK BACK(1)
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