TaikenMarker|No.1→2|ポートレイトワークショップ:問題発見のための事前課題

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大学も後期が始まり、また新しい演習が始まった。そのうちのひとつ、2年生のコンテンツデザイン総合演習ではコース内での課題選択者約40名を受け持っている。

この演習はグループで半期かけてデザインの課題に取り組むもので、学生には負担が大きいようで毎度四苦八苦させているが、彼らの成長につきあう過程で濃い対話からは得ることは僕の方もそれなりに多い。なので毎度気合い入れて題材や課題の深め方を考えている。去年は「呼吸する文庫」という名前で書籍の共有サービスを考えたが、今年は、「Flow&Stock,TaikenMarker」と名付けてみた。サブタイトルに「日々の体験を変換するライフメディアのデザイン」。

やがて薄れていく体験を何らかのかたちで残し、見返して新しく何かに気づくことができるようなメディア、広義にとらえるとライフログの一種といえるけれども、機械的に履歴を積み重ねるだけではなく、続けたくなる魅力を持つ、柔らかいサービスを考えていくという課題である。携帯メーカの京セラさんに産学提携としてご協力を頂いているが、モバイル向けとして完結するのではなく、例えばiPhoneを取り巻くエコシステムに見えるように、クラウドも含めたサービス全体の中で情報の流れと関係を意識化していくことを狙っている。これから1月まで続くが、暇を見て学生たちの取り組み経過をレポートしていきたい。

さて夏休み明けの初回、9/28のこの演習ガイダンス後に課した事前課題は、「ポートレイトワークショップ」。次の授業までに5つのモジュールを組み合わせた自分のポートレイトを作成してくるように指示を出した。課題のアウトプットが主目的ではなく、出発点として問題を発見するための課題である。

5 つのモジュールから成立する、個人のポートレイトを作成する。そして同時にそれぞれの行為や体験、制作する中で気付いたことを記録し、詳細にメモを取る。3人一組になり、A(モデル・自分)、B(カメラマン)、C(記録者)の役割を振る。順番にそれぞれの役割をこなし、全員分をおこなう。 (課題プリントより)
 
できたばかりのグループなのでアイスブレーキングも兼ねて楽しくやってもらおうということで、時間を制限しないで空き時間に作らせた。そして翌週、全員ができたものを持ち寄ってチームごとに壁に貼ってみる。

IMG_4724.jpg1辺が20cmの正方形を5つつなげられた形式。正方形の中身は撮ってくるものを細かく指定してある。

まず一番上の1枚目は、正統派のポートレイト。カメラマン役が主導し、学内でもっともその人に似合うロケーションを選択する。そしてカメラマンから見て、その人の良さをもっとも引き出すような一枚の写真を撮る。みんな学内ロケを敢行し、それぞれ工夫して緊張の解けたいい顔を撮影してきた。初めて一眼レフに挑戦して感動するもの多数。


IMG_4725.jpg2枚目は、モデルとカメラマンの関係を表す36枚の組み写真。記録役が、モデルとカメラマンの会話をメモしつつ一定時間にケータイのカメラで撮る。ベストショットの瞬間を切り取った上のモジュールと並べてみると、写ってないカメラマンが奮闘する姿や、時間の前後関係といった舞台裏の生のやり取りがはっきりと表されている。

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3枚目は、自分が携帯している持ち物を並べて撮影する。長い期間に個人的に蒐集されて並べられたものは、容易に人物プロファイリングできそうなほどその人の普段の日常生活の様子を語り始める。この女の子はモバイルなコンピュータを4つも携帯しているようだ。本人が意識してなさそうなのが今の日本の文化ってすごい。

4枚目は、100色の色紙の束から自分のフィーリングだけで一枚をチョイスする。その上にマジックを使って自筆でサインしたもの。自分ではあまり自覚できないが、特に筆跡やサインの形式にはその人らしさは強く表出される。

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最後の5枚目は、2009.4 月~9 月の自分の記録した文章の中から最も思い入れが深いものを抜き出す。(演習の作業記録、自分のブログ、メール、レポート、SNS 等何でも良い。既に書かれたものを再利用することとし、新しく書かないことが条件。書かれた日付と時間を入れること)文字組のオリジナリティを消すために、全員、文字は小塚明朝 pro M,12ポ, K80% で作ること、と指定した。

めいめいで自分で書いた過去のテキストを掘り返して切り取ってきたが、プライベートなメールの一節であっても作業記録であっても、それぞれのテキストの周辺には、書いた本人にしか見えない思い入れの理由となる大きな背景情報が隠れていることは共通しているはず。

以上の5枚である。決められたフォーマットでグループ分がそろって並ぶと、結構美しい。そして同時に、個人の体験・記憶とは単純にイベントのスナップ写真だけじゃないことや、さらにはその人らしさやその人たらしめている情報って一体いつの間に生みだされるんだろう、という問題がすこしづつ見えてくる。


IMG_4640.jpg そして、持参したポートレイトを壁に貼り、全員で簡単な感想を共有したのち、いよいよ本番のワーク開始。

この5枚はバラバラだが、実は全部個人にまつわるもので、一人一人の経験を違う切り口から切ったものに過ぎない。それぞれのモジュールに写っているものはなんだろう? ホールのケーキの写真を参考に出して、このケーキ本体にあたる「ひとまとまりのもの」は、いったいどう描けるのだろうか?と問う。5枚のポートレイトをバラバラのものではなくシステムとしてとらえるために、まず個人で簡単なインフォグラフィックスとして鉛筆で描き起こしてみる。(10分程度)

学生たちはいきなりの難題に頭を抱えていたが、前期グラフィックデザインでビジュアルシンキングの基本は叩き込んで(?)いるので、なんとか手を動かし始めた。

IMG_4641.jpg短時間で、ルーズリーフに時間軸や因果関係をなんとかスケッチ。まずは無理矢理でもOK。この学生は、荒いけど全体に通底する時間の流れの存在を一発で見抜いて、なんとか見えるようにしようとしている。

IMG_4660.jpg10分後、グループでスケッチを共有し、議論しながら大きな模造紙にまとめていく。勘がいい学生たちが先導してくれたおかげで、よく理解できてなかった学生らもここで視覚化しなきゃならない要素ごとの関係に気づくことができたようだ。そこは協調学習のいいところだと思う。

ここまでであっという間に予定4限終了。来週には大きな図をまとめ、その上に各自で気づいたことをポストイットに書き、模造紙の上に貼って考察を深めていく。あと、これと別に5限からインタビュー調査も行って、併せて発想の土台にしていく。

今回はひとつの試みとして強引に視覚へと変換させてみたが、最近思っていることとして、KJ法のように、最初からポストイットでキーワードを並べて構造化させていくのは、学習者によっては言葉の特性である断片的で抽象的な思考から逃れにくいんじゃないか、ということがある。

ポストイットを並べてうんうん唸る様子を見ていると、言葉でしか考えてない学生は、いつまで経ってもでてくるのは言葉のままでしかない。やっぱり空間的にイメージしやすいビジュアルシンキングにチェンジしつつ議論した方がものごとの因果関係がイメージできるし、共有する中でそこにない可能性とか新しい組み替えもみつけやすいのではないかと。様子見ながらその辺をもう少し探ってみたい。



演習終了後、せっかくなので数名の学生に協力してもらい、ディスカッションルームの大きなホワイトボードに一列に並べて貼ってみた。

IMG_4716.jpg表に見えないようにセロテープでわっかをつくって貼っていくのは・・・意外としんどい。


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全員分貼り終えて達成感にあふれるの図。手伝ってくれた学生諸君、お疲れさまでした。

この日に限って広角のLumixを忘れたので(笑)35mmのレンズでは一部入りきらなかったが、一列に並ぶとなかなか壮観だ。貼りっぱなしにできないのが残念で仕方がない。



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このページは、kamihiraがOctober 8, 2009 2:57 PMに書いたブログ記事です。

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